みなさんは北欧デンマークと言えば何を思い浮かべますか?幸福度の高い国、可愛らしい町並み、家具や照明、はたまたこれといったイメージがない方もいらっしゃるかもしれません。

年間を通して日照時間が短いデンマークの人々は、多くの時間を家で過ごします。彼らが大切にしていることのひとつが、家族や大切な人と囲む食卓。美味しい料理を並べ、たわいない会話を楽しむ、何より大切な時間です。
ご紹介するのは、そんな何気ないひとときをより豊かにしてくれる、とある陶芸工房の器とモノづくりのお話です。

デンマークの首都、コペンハーゲンから200kmほど離れたユトランド半島ホーセンス。K.H.ワーツ(K.H.Würtz)は、この町で父アーゲ・ワーツ(Aage Würtz)とその息子キャスパー・ワーツ(Kasper Würtz)が営む陶芸工房です。

K.H.Würtz 工房

工房の創設者である父アーゲは、イギリスの陶芸家バーナード・リーチの工房で学んだ経歴を持ちます。ろくろ成形と釉掛けの手作業で製作される器は、当時展示会で見た日本の器にインスピレーションを受けていると言います。

アーゲ・ワーツ( Aage Würtz )

1980年代に創設された工房ですが、ミニマリズムのブームに押され一旦は閉鎖。復活したのは息子キャスパーの想いからでした。父の下で技術を習い、2000年に親子で製作を再開します。

転機となったのは デンマークの名店「Noma(ノーマ)」のシェフ、レネ・レゼピとの出会い。 世界のベストレストランで1位に選出され、予約の取れない名店として有名なノーマで器が採用されたことをきっかけに、高い評価を受けるようになりました。

モノづくりの背景には、枠にとらわれない独自の発想があります。

グリニッチのスタッフが工房で伺った話では、模様に変化をつけるために、シェービングクリームを使ってみたり、ガラスを振りかけたり、試行錯誤しながら作品を生み出しているそう。暮らしを豊かにするために、様々な創意工夫を凝らしてきたデンマークの人々らしい自由な発想だな、と感じます。


キャスパー・ワーツ(Kasper Würtz) と アーゲ・ワーツ( Aage Würtz )
成形した作品にガラスを振りかけています

近年では日本人の陶芸家の方も作陶されています。日本のインスピレーションを受けた作品と、新たな日本の陶芸が交わる。素敵な巡り合わせですよね。

「作り手が表に出ず、使い手が使うためのものづくり」をモットーとし、3種類の土と4種類の釉薬のみで作り出される作品は、まるで自然の中にある石や岩を思わせるような独特のテクスチャー。そのため、 器自体の華やかさや突出した個性は一見感じにくいかもしれません。

個人的な意見ですが、この器の本当の魅力に気づくのは、料理を盛りつけた時。
おすすめはシンプルなサラダやフルーツ。食材をより瑞々しく、鮮やかに見せてくれます。
自然で育った食材と相性が良いのは、同じ自然を意識して作られたからでしょうか。

K.H.ワーツ Bowl(L)/ Bowl(S)/ Plate(S)

田舎の小さな工房から世界中に届けられる作品たち。製作には時間もかかり、数も限られます。今回代官山店に入荷するのも、1年以上かかりました。

料理と一体となり、その美しさや底深い魅力に改めて気づく。私も大の器好きですが、そんな逸品に出会えることは、そう多くないと思います。

実際に自分の目で見て、触れて、どんな料理を作ろうか想像してみる。そんなふうに器を選ぶひと時も楽しんで頂けたら、とても嬉しいです。

代官山店 木村