greeniche米子店で月一回オープンする、特別なレストラン「季節を楽しむツキイチレストラン」。
第3回目となる今回のインタビューでは、
お料理を担当してくださっている大久保ゆかさんに、ご自身がシェフを務める「リベルタ・ラ・クチーナ」について、たっぷりお話を伺います。


-改めて、大久保さんのレストラン「リベルタ・ラ・クチーナ」さんについて、教えていただきたいと思います。
店名はイタリア語で「自由な台所」の意味と伺いましたが、提供されるお料理はイタリアンだけ、というわけではないようですね。

そうですね、お料理のジャンルは限定せず、お客さまのお好みに添うようなお料理を提供しています。
営業形態は完全予約制をとっているので、ご予約をいただいた時点で、お電話やSNSのメッセージでお客さまとコミュニケーションをとることができます。
苦手なもの、アレルギーのあるものを伺うなど、お客さまとお話を重ねていく中で、当日ご提供するお料理を決めていきます。

ハンバーガー、オムレツ・・メニューの幅は多岐に渡ります。

私たちは「メニューのないレストラン」と謳っていますが、レストランのこだわりとしてお野菜が中心のメニューであることはお伝えします。そのこだわりは大切に、できるだけお客さまのご希望に合わせるメニューをご提供します。

-お客さまに寄り添うメニューだけれども、こだわりは「お野菜が中心」。そこにはどんな背景がありますか?

農家さんの作ったお野菜を、もっと多くの方に知ってもらいたい、と思ったのがきっかけです。

鳥取県にはスーパーだけでなく、野菜の直売所もたくさんあるのですが、例えばアーティチョークなど見慣れないお野菜や変わったお野菜は、調理の仕方がわからず売れ残ってしまうそうです。農家さん自身も、どのように調理すれば良いのか、実はわからない、という方も多いようで・・

美味しいお野菜が、無駄になってしまうのがもったいない。何か私にできることはないかな・・と思い、そうしたお野菜をレストランで調理して提供することにしました。
「こんな風に料理したら美味しくいただけるんだ」と、見慣れないお野菜にも親しみを持っていただき、フードロスの削減に少しでもお役に立てたら・・と思っています。

また、お料理にたくさん農家さんのお野菜を使うことで、農家さんのご紹介もできます。
このレストランが、農家さんとお客さまを繋ぐ場所になればいいなと思って、お野菜中心のレストラン、というこだわりを大切にしています。

いろんな調理方法で作られた、お野菜中心のお料理。-

-美味しい調理の仕方がわかれば、いろんなお野菜がもっと暮らしに身近になりそうですよね。
ちなみに大久保さんは、そうした調理方法のインスピレーションはどうやって得ているのですか?

近くにレストランがあって、そこのシェフが経験豊かで、面白くて。彼から、お野菜の面白い使い方を教えてもらうこともありますね。
農家さんとの繋がりを作ってくれたのも彼です。お客さまだけでなく、そうした同業者の方との繋がりも大切にすることで、繋がりの輪がどんどん広がっていくことも楽しいなと思います。


-お料理のジャンルに拘らない、ということでしたが、お客さまからリクエストがあることが多いですか?

具体的なリクエストがあることは、実はあまりなくて・・ほとんどはこちらのおまかせ。
「これ!というものがないのであれば、きっといろんなものを食べたいと思うのでは?」「目で見て楽しくて、旬なもので、いろんな味付けのお料理を・・」と考えた結果、中華や和食など、いろんなジャンルのお料理を提供するようになりました。

お客さまが食べたいものは何かな・・のアイデアで、時にはスペイン料理も。

また、お料理のジャンルに拘らないのにはもう一つ、大切な理由があって。

このレストランの目的は、空間と時間を提供する場所、と考えています。
お料理は、あくまでそのお手伝い。
お料理の専門店のように、「こんな料理を提供したい、広めたい」という想いから始めたものではないんです。

-空間と時間を提供する場所。レストランとしては珍しくて面白いアプローチですね。

これには、レストランのオーナーの想いが込められていて。
オーナーが運営する燕珈琲(ツバメコーヒー)も、コーヒーを味わう空間と時間を一番大切にしています。
イベントに出店するときは、「コーヒーを飲むのに良い空間が味わえる」と思ったイベントを選んで出店。過去にやっていたトレーラーカフェも、海岸の芝生にポツンと(笑)。
ただコーヒーを提供するのではなくて、そのコーヒーを味わう空間と時間も一緒に提供したい、という想いがそこにはあって、リベルタ・ラ・クチーナもその想いを大切に受け継いでいます。

トレーラーカフェ時代から人気のチーズケーキ。

-空間と時間にこだわる。インテリアを扱う私たちからすると、自然と出てくる発想ですが、お料理や飲み物を提供する方だと珍しいですよね。それがリベルタ・ラ・クチーナさんの魅力の一つなのかも。

「ツキイチレストラン」でも、空間と時間の大切さを強く感じています。素敵な家具に囲まれて食事をするお客さまは、顔も緩んでとても良い表情で。「どこに座ろうかな」と家具を選ぶのも楽しそう。
同じお料理を提供していても、うちのレストランに来る方とまた違う表情が見れて、私も楽しいです。


-先日のインタビューで、「原点はお母さまの家庭料理」と伺いました。
レストランでも家庭料理を提供したい、と思われた背景には、どんなものがありますか?

家庭料理って、人が集まって繋がる料理だと思っています。
例えば、最近流行りの韓国ドラマを見ていると、豪華で特別な王宮料理は食べる人が限られるけれど、家庭料理が出てくる場面はたくさんの人が集まって、食事を通して人と人が繋がっている。
このレストランでは、人と人の繋がりも大切にしているので、専門店や背伸びしたレストランで味わえる特別な料理よりも、食べ慣れていて安心できる家庭料理を提供したいと思ったんです。

おにぎり、卵焼き・・家庭料理の安心感も味わえる。

-身近な家庭料理で、人の心を豊かにする。
料理自体が特別なものでないから、より空間や時間を大切に味わえそうですね。

今の時代って、情報量がとても多いですよね。たくさんある情報から、食べたいものを考えて、選択して・・と、食事をするだけで頭が疲れるという方、少なくないと思うんです。
これが食べたい!というものがない時の選択肢に、リベルタ・ラ・クチーナが上がればいいなと思っていて。
「あそこに行けば、何か美味しいものが食べられる。心が落ち着く食事ができる」。
そんな、身近な家庭料理を味わえるレストランとして、みなさんから愛されるレストランになれば嬉しいなと思います。


空間と時間を提供するためのレストラン。お料理は、そのお手伝いをするもの。
その想いが込められた大久保さんのお料理は、見た目も味も無理に目立つものではなく、素材の美味しさを余すことなく味わえるものばかり。身体にしっとり馴染んでいくような、心地良い味わいがあります。

そこに行ったら、何か美味しいものが食べられる。
多くの方が「大久保さんのおまかせで」とリクエストしたくなる理由が、そこにはある気がします。

広報 岡田

ABOUTこの記事をかいた人

岡田智理

グリニッチ広報・企画担当。 インテリアコーディネーター資格、住空間収納プランナー資格を所有。 ブログや企画イベントを通して、暮らしを満たすヒントや、グリニッチが提案するさまざまな価値について、明るく楽しくお伝えしていきます。