みなさんこんにちは、代官山店の岡田です。

グリニッチに入社して早3ヶ月、
大好きなインテリアに囲まれるのはもちろん、
みなさんに「暮らし」の提案ができることに、日々やりがいと楽しさを感じながら仕事をしています。

たくさんのインテリアに触れて気づいたこと、
それは「どの家具にもストーリーがある」ということです。

どんなデザイナーが、どんな思いで作ったか。
どんな場所で、どんなときに作られたか。
何一つとして同じ背景を持ったものはなく、それぞれに個性があります。

例えば椅子を選ぶとき、
「デザインがなんとなく好き」とか「座り心地が良い気がする」という感覚も、もちろんとっても大事なことですが、
その椅子に込められたストーリーを知ることで、その椅子の魅力はグッと増すように思います。

知ることで、愛着が深まる。「ずっと使い続けたい」と思えるようになる。
数年経って、「良い買い物だったなあ」と思える。
そんな気持ちになってもらえれば、そのお手伝いができれば、嬉しいなあと思います。

ということで今回は、あるストーリーを持つ1脚の椅子をご紹介します!

ボーエ・モーエンセン J39

J39は、デンマークのデザイナー、Borge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)の作品。
「The People’s Chair(ピープルズチェア=みんなの椅子)」という愛称で、長年親しまれているデンマークのベストセラーチェアです。
デンマークでは知らない人がいない、というくらい有名なんだそう。

日本にはそんな、「みんなが知っている」ような椅子ってなかなかないですよね・・デンマーク人のインテリアに対する意識の高さが伺えます。

近年では原材料費高騰の影響などもあり、年々価格が上がっていたこのJ39ですが、
「モーエンセンの素晴らしいこの作品を、もっと多くの方に知ってもらいたい」という想いから、この4月より少しお求め安くなりました。

このような背景も、みなさんに今おすすめしたい理由のひとつです!

モーエンセンって、こんな人です。

ボーエ・モーエンセンは、デンマークの近代家具デザインにおける代表的なデザイナーとして知られています。
1942年からはFDBモブラー(デンマーク生活協同組合家具部門)のプロダクトデザインマネージャーとして活動しました。
Yチェアで有名なハンス・J・ウェグナーの方が、日本では知られているかもしれませんが、
デンマークではモーエセンも同じくらいの知名度があるようです。

ちなみに、モーエンセンとウェグナーは、同い年で大の仲良し。
時に協力して商品を作ったり、競い合ったり、公私ともに非常に親交が深かったそう。
インテリア好きとしては、これ以上ない最強タッグ。神々しいです。

モーエンセンの信念は、「シンプルかつ実用的な家具を、リーズナブルな価格で提供すること」。
モーエンセンはよく、”質実剛健”という言葉で表現されます。
流行に左右されず、飾らないデザイン。得意とする直線のラインには、ブレないたくましさを感じます。

(個人的見解)
モーエンセンのデザインを、わかりやすく例えるなら・・
朝食でいえば、「素朴な和食の朝ごはん」です。
ホテルで出てくる華やかな洋風朝ごはん(フルーツがたくさんのったパンケーキとか)よりも、
お家で毎日食べる、白ご飯とお味噌汁の朝ごはん(味噌汁はちゃんと出汁をとっている)のような。
決して派手ではないけれど、いつも変わらない安心感。
シンプルだからこそ、素材の良さが引き立つ。そんなデザインです。

永遠のザ・スタンダード

そんなモーエンセンによって生み出されたJ39。
たくさんある魅力のうち、3つに絞るとすると、
一番最初に挙げたいのが、「永遠のザ・スタンダード」であるということです。

1942年、FDBモブラー(デンマーク生活協同組合家具部門)に入ったモーエンセンは、ある課題を与えられます。
それは、「庶民の為に、末永く愛される安価で高品質な椅子を」ということ。

そうして5年の歳月をかけて作り上げた作品が、このJ39。
1つの椅子に5年・・モーエンセンの仕事に対する誠実さ、妥協のない姿勢が伺えます。まさに質実剛健。

FDBモブラーに携わったデザイナーたち。右から3番目がモーエンセン。

このような椅子が求められた背景には、当時の社会情勢があります。

戦後、人が地方から街中へ移住していくと、次第に土地がなくなり、集合住宅が増えていきました。
そんな中で求められたのが、狭い部屋にも使えるコンパクトな家具。
誰もが安価で購入できる、シンプルで、そして丈夫な家具でした。

こうして作られたJ39は、「極めてシンプルで無駄がないデザイン」。
必要最低限のパーツで構成され、過度な装飾もありません。
軽くて丈夫、どんな人にも使いやすい椅子。
そんな、”目立った特徴がない”ことが特徴といえる、いわばザ・スタンダードな1脚です。

流行りものではないし、癖もない。
だからこそ、これまでも、そしてこれからもずっと愛され続ける。

そんな「永遠のザ・スタンダード」が1つ目の魅力です。

伝統を尊重「リ・デザイン」

2つ目の魅力が「リ・デザインから生まれた作品である」ということ。

リ・デザインとは、デンマーク近代家具の父と称されるコーア・クリントが提唱した思想で、
「歴史あるデザインを見直して、生活から実用性を学び、その時代の生活に馴染むデザインにする」という考え方です。

クリントに師事したモーエンセンは、クリントの教えを忠実に受け継ぎます。
J39もこの「リ・デザイン」により生まれました。

リ・デザインのもととなったシェーカー家具。もともとシンプルなものを、より簡素な作りにリ・デザインした。(出典:森下和洋家具ホームページ)

J39がリ・デザインしたのは、アメリカのシェーカー教徒が教会で使っていた椅子。
シェーカー家具の特徴でもあるまっすぐに伸びた脚や、 組み立ての際に特別な工具などを必要としない 簡素な造りをそのままに、一切の無駄をなくしました。

シェーカー様式のラダー(梯子)状の背板を、大きな一枚板にリ・デザイン。

そして、座り心地にもこだわり。
ペーパーコードの座面に傾斜をつけ、 深く腰掛けた時に体への負担が少ないよう配慮されています。

シェーカー家具のシンプルさをよりシンプルに、そして当時の庶民目線に立って機能的に。
「庶民の為に、末永く愛される安価で高品質な椅子を」を見事に実現した1脚!なのです。

人にやさしいものづくり

最後3つ目は、関わる全ての人を豊かにする椅子だ、ということ。

「庶民のための椅子を」の”庶民”は、
その椅子を“使う人”だけでなく、その椅子を“作る人”でもありました。

J39は、手編みが必要なペーパーコードを使用しています。
モーエンセンは、戦後の母国に仕事を生み出すべく、あえて手作業を要するペーパーコードの座面を選びました。粋な計らいですよね。

そして、庶民に椅子づくりの手伝いを求め、歩合制により賃金を支払い、庶民の生活を確保しました。

モーエンセンが初代企画デザイン担当責任者を務めたFDBモブラー。
その設立の目的は、インテリア事業の角度から消費者の生活レベル向上を目指すというものでした。

「庶民にとって使いやすい家具をつくる」という、文字通りのインテリアの役割だけでなく、
「庶民の仕事になる家具をつくる」という労働面においても、人々の暮らしを支えたということ。
社会貢献をする椅子であった、ということが、他の家具ではなかなか見られない魅力です。

いかがでしたか?
一見するとシンプルな椅子。
でもそのストーリーを知ると、もっとじっくり、向き合ってみたくなります。

みなさんの素敵なインテリア選びの一助となれば、嬉しく思います。

代官山店 岡田